「夢破れて山河有り」について

 

  題名の「夢破れて山河有り」は唐の詩人杜甫の五言律詩「春望」の中の有名な一節「国破れて山河あり」にちなんで名づけました。「安禄山の乱で唐は破れ往時の面影はないが、山河だけは昔のままである。」という杜甫の思いは日本人の心に今でもひしひしと伝わってきます。
 戦後の高度経済成長により物質面は格段に豊かになりましたが、心の面でははたしてどうでしょうか。日本はバブルの狂乱のあと、いろいろな施策をとりましたが経済は以前厳しい状態にあります。そのほか少子化、高齢化等問題は山積しています。しかし、どんなときでも山河(自然)は時に厳しい側面はありますが、いつでも我々をやさしく迎えてくれます。
 そんな思いで私は風景写真を撮影していますが、日常から解放され自然の懐に入るとふと心が和らぐ時があります。いにしえより続く自然の中では人は小さな存在かも知れませんが、自然の物語同様我々個人の物語も永久に語り続けたいものです。
 最後に環境破壊が問題になっていますが、自然を破壊することは自然の一部でもある私たち自身を疎外することでもあり、未来にわたって共生していきたいものです。