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2005年09月03日

2005年09月03日

たくさんの目


 ある日のことです。わたし近くの渓流をゆっくりと歩いていました。渓流ってマイナスイオンがいっぱいで暑いときなどとてもさわやかです。
「ああ、こんなにのんびりするのは久しぶりだわ」わたしは思いっきり背伸びをしました。
 わたし日常生活では味わえない小さなしあわせを見つけるためにここにやってきました。 ちょっと座れるくらいの石があったのでそこに腰を下ろしました。上を見上げるとどこまでも続くような青空です。
「なんて気持ちがいいのでしょう」そんなこと考えながらいつのまにかわたし眠ってしまいました。
 しばらくして遠くから「ごう」という音が聞こえわたしは目が覚めました。この音がなんであるかがわかるのにはそんなに時間は必要ありませんでした。
「きゃあ」という間もなくわたしは増量した渓流に飲み込まれてしまいました。でも不思議に恐いとかそういう感情はありませんでした。それどころか何かふわふわのおふとんの上に座っているような感じです。
 しばらく流されていくといままでのがうそだったかのように水が引いていきました。何か不気味な雰囲気が漂っています。そう、誰かたくさんの人に見つめられているかのような感じです。振り向くと渓流の中にたくさんの目がありました。恐そうにわたしをにらんでいます。
「あなたたちだれなの」と話しても答えは返ってきませんでした。
 でもわたしはわかっています。わたしを助けてくれたのはこの不気味な目さんなんです。何千年も前からこの目はいるのでしょう。やがて暗黒の渓流に太陽の光が差し込むと目はどこかに消えてしまいました。
 あとで妖精さんにこのことを話すと何でもこの渓流の主なんだそうです。
「また、来るわね」と振り返りながらわたしは何事もなかったように帰路を急ぎました。

投稿者 kiki : 16:33 | コメント (2) | トラックバック (0)