上の木立から水が落ちてくるので、水芭蕉さんと同じようにわたしの純白のブラウスと緑のスカートもびしょびしょです。
今まで立っていたのですが、これだと水芭蕉さんを見下ろすようになるので、スカートの先をつまんでしゃがみました。
わたしがどうしてこんな格好で来るのですかって。それはこれまで読んでいた方にはおわかりでしょうが、わたしが悲しい時とか慰めてもらいたい時に水芭蕉さんになって、何日かいっしょにいるからなんです。そうしてお話したり遊んだりするとわたしのこころも少しずつ和んでくるんです。
少し時間がたってわたしたちたくさん遊んだので少しのどがかわいてきました。
「そうそう、わたしとお茶しませんか」仲良しの水芭蕉さんがわたしを誘いました。
「ええ、喜んで。わたしとってもうれしいわ。でもわたしすっかりびしょびしょよ。ちょっと着替えてくるわね」
そう言って立ち上がるとわたしのスカートのすそから水が流れ落ちました。そしてその水は水芭蕉さんの緑のスカートの上に落ちていきました。
これは汚れた水ではありません。わたしのスカートは水芭蕉さんのスカートとまったく同じ天然のものです。天からのしずくとまったく同じくらい澄んだ水です。水芭蕉さんのスカートにもともとあった天から落ちてきた水とわたしのスカートからの水がまじりあい、これ以上澄んだものは考えられないくらいの透明できらきら光る水ができました。
わたしはピンクのお洋服に着替えてきました。するとね、不思議なことに木立から降ってくる水が止まってかわりに太陽の光が差し込んできました。
お洋服って不思議な力を持っているんですね。女の子がおしゃれをするのはこういう意味もあるんです。言うまでもなくピンクは春の色、春を呼ぶ色なんです。まもなく桜の季節もやってくることでしよう。
水芭蕉さんはさっきの澄んだ水を温めて、おいしいお茶を作ってくれました。これはわたしたちがいっしょになって作った水からできたお茶です。自然と人とがいっしょになって作りました。
夢、希望それははかないものです。でも、このこのお茶の中には天の星の数と同じくらいたくさんあります。わたしたちこのお茶を飲みながら楽しくお話をしました。わたしのこころとからだが澄んでいくのがわかります。わたし夢をたくさんこころの中に取り込みました。きっとあしたから素敵な日々を過ごすことができるでしょう。
「乙女の願い」
わたしと楽しいお茶しませんか♪
ここではゆっくりと時が流れていくの
そして、忘れていた時間を取り戻しましょう
このお茶を一杯飲むごとに
わたし可愛らしくなっていくの
きっとあなたもかしら
風船のようにふくらんでいくわたしのこころ
きっと夢がいっぱい入っているのね
やさしさにあこがれて、美しさにあこがれて
わたしこのままずっとやさしく可愛い女性でいたい
いつまでもいつまでもね♪
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