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2010年05月17日
メロディーへの想い
連休に行った鎌沼周辺の続きです。
一切経山から下りてくるとすぐ鎌沼ですが、今年はほとんど凍っていました。
木道は次第に雪にうずまっていきます。
いつもの年は一周して蓬莱山迷子コース?を通って帰るのですが、今年は途中まで行って引き返しました。
メロディーが逝って、ちょうど一ヶ月が経ちます。
わたしのこころには容赦なく突風が吹き荒れ、最初は少しだけのこころのひびも次第に大きくなっていきました。
わたしはこれからどうしたらいいのでしょうか。
今まで次第に遠ざかっていたメロディーが再びわたしのすぐそばに感じられるようになりました。
思わず「メロディー」と名前を呼ぶと、わたしのこころの中にかすかなぬくもりが感じられました。
きっとメロディーは遠くに行かないでわたしのこころの中で生きる決心をしてくれたのでしょう。
「たとえいろいろな困難があったとしても二人でいっしょに生きましょうね。メロディーちゃん」
メロディーの面影
異界の生き物
果てのない世界
荒涼としたかの地
ひび割れたこころ
境界の家
(境界の家とはあの世に行くための準備をする家です。写真はあくまでイメージです)
倒れるわたしと影
一縷の望み
(二人で共に)
わたしの見た夢
『境界の家』
わたしおしゃれをするのか大好きなんです。きょうは何を着ようかしらと迷いましたが淡いパステル調の水色のセーターに赤のスカートにしました。自分で言うのも変ですがとってもかわいいんです。赤い口紅を塗るため水色のコンパクトを開いてわたしの顔を映してみました。口紅を唇に注そうとした時、手がすべり口紅がコンパクトについてしまいました。
口紅の赤がコンパクトを染めたとき淡い赤い色がガラス面を薄く包んでいきました。しばらくして赤がコンパクトの水色に次第に変わりました。そして水色が薄くなり中から小さなみずうみが現れました。
手がコンパクトの表面に触りました。するとひとさし指がガラスの中に入っていきます。わたしは思わず指を引っ込めました。しかしコンパクトの水色とわたしの着ている水色と赤のお洋服が激しく反応し混じりあいました。「きゃあ、なんなの、わたしいやよ。誰か助けて」と大きな声で叫びましたが、わたしはそのままコンパクトの中に吸い込まれてしまいました。
うずを巻いたような気流に取り込まれながら体がまっさかさまに落ちていきます。野鳥でしょうか、大きな鳥がこちらを見つめています。「鳥さん、お願い助けて」鳥に声が届いたのでしょうか。そのまま行ってしまうかに思えた鳥が近くにやってきました。大きな鳥でした。わたしは野鳥につかまりゆっくりと地上に降りていきました。降りたところは深い森の中でした。「ありがとう」鳥にお礼を言うと巨大な野鳥は弧を描きながら大空へ飛んで行きました。
森の中はうっそうとしてどこを探しても道らしきものはありませんでした。何度も転びながらわたしは森の中を歩きまわりました。体じゅうどろどろです。どこまで歩いても森の出口は見つかりませんでした。どこからか水の流れる音が聞こえます。音のするほうへ行ってみると湧き水が流れていました。水を口に含ませると全身に再び力がよみがえったような気がしました。
次第に日が暮れてだだでさえ暗い森の中はもう何も見えません。このまま歩いても仕方がないと思い大きな木の下に腰を下ろしたとき木の間からかすかな光が見えました。思わず立ち上がり光に向かって一歩一歩足元を確かめながら歩きました。ほどなく森から抜けましたが光はまだまだ先でした。いや、光に向かって進もうとするとなぜか光が遠ざかっているようにも思えます。
どのくらい歩いたのでしょうか、やっと光が出ているところにたどり着きました。明かりが漏れていたのは小さな古ぼけた家でした。ドアをたたきましたがいつまでたっても誰も出てきません。わたしはそっとドアを開け中に入りました。真っ暗でしたが目が暗さに慣れているのでしょう、手探りで歩くことができました。中は意外に広く廊下の両側に部屋が並んでいました。どの部屋も鍵がかかっているらしく開きませんでした。突き当たりに階段があり、キシキシと音をさせながら登りました。二階も一階と同じように廊下の両側に部屋が並んでいました。目を細めるとかすかに光の漏れる部屋があり、わたしはその部屋に駆け寄りました。ドアのところに名前が書いてありました。最初は何て書いてあるかわかりませんでしたがよく見るとそこにはkikiと書いてありました。
思わず「えっ、kiki、わたしのことなの」と大声を出しそうになりましたがこらえました。そっとドアを開けると古ぼけた部屋の上にランプがありそこから光が漏れていたんです。わたしが部屋に入るとドアが静かに閉まりました。慌ててドアを引っ張りましたがドアはびくともしません。あきらめて部屋を見渡すと真中にテーブルと椅子があり、そのわきにはベッドがありました。
疲れ果てて椅子に腰をおろしてテーブルを見ると表紙にkikiと書いてある分厚い本がありその上にメモがのっていました。
「kikiさん、お疲れ様。ここまではずいぶん長い道のりだったでしょう。でもご安心ください。きょうはゆっくり庭でも散策され、ベッドでゆっくりお休みください。明日ご案内します」
メモの内容はこんな感じでした。「なによ、これ、どうなっているの」わたしは当惑しながら窓から外を眺めました。今まで気がつかなかったのですが外は広い庭があり、部屋から庭へは出られるようになっていました。わたしは外に出てみました。庭は夜だというのに隅々までよく見えました。手入れのよく行き届いた庭でした。
突然人影が近づいてきました。わたしと同じくらいの女の子でした。
「わたしの庭にどうして入れたの、ここわたしだけの庭なのに」
「ごめんなさい、ここあなたのお庭だったのね。わたし森から出てここにまよいこんでしまったの。ここがどこかもわからないの」
「ほんとう」その子は疑い深い目でわたしを見まわしました。
「ここがどんな場所か知らないなんて、信じられないわ。あなたのお名前は」
「kikiよ」わたしは答えました。
ただでさえ青い女の子の顔が真っ青になりました。
「わたしもkikiなの、だからあなたもこの庭に入れたのね。だったら仲良くしましょう。ところであなたは何でこうなったの」
わたしは同じ名前の女の子が質問している意味がわからず当惑していました。
「言いたくないんだったら言わなくもいいのよ、いろいろ事情はあるしね。部屋に入りましょう、寒くなったの」
わたしたちは部屋に入りました。
「しかし変ね。わたし、一人が一部屋だと聞いていたの。でもいいわ、仲間な多いほど心強いものね、あなたの本見てもいい」
わたしは依然としてこの子の言っていることがわかりませんでした。
「本て何のこと」
「とぼけないでよ、あなたの本よ、あなた自身の本のことよ。わたしの本はこれ、見てもいいよ」
その子はさっきテーブルに置いてあった本を指差しました。
本を見てみるとその子の生まれやこれまでのことが詳しく書いてありとてもすぐには読めないほどの分量でした。
「わたし、本はないわ」
その子はびっくりしている様子でした。
「あなた、ここの人ではないのね。どうしてここに迷いこんでしまったの、そうかわたしと間違えられたのね。早くここから出たほうがいいわ、明日にならないうち、いいえいますぐに。誰にも気がつかれないようにそっと」
その子はわたしをドアのところに連れていってドアを開けました。あれほど引っ張っても開かなかったドアが簡単に開きました。わたしがそのことをその子に話すと「この部屋、わたしのだからね」と笑っていました。「わたしあなたと会えて嬉しい、同じ名前の人に会えるなんて思ってもいなかったわ」
わたしは「さよなら」と言いながらその子に握手を求めました。
その子は悲しそうな顔で言いました。「ごめんなさい、握手できないのよ。あなたもいっしょに来てもらうことになるから。わたしの分までがんばってね、さようなら」
その子のすすり泣きが聞こえましたがその子は「ありがとう、ほんとうにありがとう、でも急いでね」
と言ってドアを閉めました。
わたしはその家を出ると誰にも見つからないようにそっと歩きました。わたしには来てはいけない場所だったのです。たぶんあの子はさびしくて同じ名前のわたしを呼んだのでしょう。太陽が昇ってきました。あの家の方角を見ましたが何も見えませんでした。美しい朝焼けでした。
(説明)
この境界の家はあの世への旅立ちの家であると同時に癒しの家でもあります。わたしはこの家の一つの部屋の鍵を持っています。この部屋はわたししか入ることができません。
ある時部屋の外を見るとわたしと同じくらいの年齢の少年が歩いていました。その少年もあしたにはこの家を出て遠い旅立ちをしなくてはいけません。
わたしがこの部屋の鍵を持っているのは、今は秘密にしてくださいね。
投稿者 kiki : 21:04 | コメント (10) | トラックバック (0)